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チベットのタンカ(仏画)絵解き・・・絵が象徴する伝統的・宗教的テーマ2007年9月22日に長野市・善光寺近くの、当 西方寺にて行われた、チベットのタンカ(仏画)に基づく絵解きには、下図のような絵が用いられました。
パドマ・オェバル伝のあらすじ
ナカムニ国に悪魔マタムルタの化身である邪施王と提婆達多の化身である臣の神足がおりました。その国のダキニ堂に観音菩薩の化身である商主ノルサンと妻の菩薩ドルマの化身ラセタムセが居りました。商主は大変有能で財産もあったので、蔵野の宝も尽きて貧乏になった王はかれに自分の地位が脅かされると思い、かれを宮殿に呼び竜王ドゥンキョン・カルモの宝希望集満を獲得に行かせる命令をだした。
これらの話のころサンドクペルリ山のパドマサンババが母の胎に入り9ヶ月と10日に子供が産まれすぐに話をしたので化身と思い名前はパドマ・オェバルと名づけられた。ある日町の子供達が薪を取りにいったので、3歳のパドマ・オェバルも出かけて子供たちと遊びのゲームをして勝ったときに子供達が悔しがってお前には父親が居ないとはやし立てたので家に帰るとすぐに母に尋ねたが、母は困って乞食の子を拾ってきたと言った。子は父を慕って泣いていると母に慰められ仏間の経を読むように言われた。
そのころ王が宮殿の屋上から市場を見ているとカルシャパニ売りの老女の前に素晴しく光る糸があるのを見て、臣神足をそこへ送り老女を脅して糸を取り上げ手に入れた理由も聞いて王に報告した。それを聞いた王は父よりも優れて賢いパドマ・オェバルを恐れて子供を城に呼び母を殺すと脅して、龍国パドマ・チェンの竜王ドゥンキョン・カルモから宝希望集満を受け取って来るよう命令した。パドマ・オェバルは3歳の子供にその様な事が如何して出来ようかと断ったが母を殺すと脅されたので仕方なく父か準備した品を王に用意させた。 彼は500人の部下とともに大船を造り海に乗り出すと黒と白と斑の竜王旃陀羅が父の時のように大船を沈めようとしたので子供が帰依呪を唱えると海は静かになった。竜王は驚いて降参して宝の思増とインドラニーラを子供の首に掛けた。竜王に帰依偈文を教え、そこに500人の部下を残し、一人で龍国パドマ・チェンへ小さな黒船に乗り向かった。岸に着くと小船を石で係留し、豹と毒蛇の居る所を抜けるために母の名三回、帰依偈文三回唱えると犬のように尾をたれて馴れた。次の第三の門で二人の龍の娘が蛇の羂索を持ち18の龍の部下を連れていて黒い蛇縄を打ったので子供の皮が千切れそうになったので帰依偈文を三回誦すと蛇縄は108片に千切れた。そこでその守衛の龍女は宮殿の龍の女王の前に連れて行った。パドマ・オェバルが宝希集満を求めると女王はその宝は竜王ドゥンキョンと龍・小龍の命魂の拠所あるので与えられない。しかし、その鍵を見つけることが出来るなら与えても良いと言われたのでパドマ・オェバルは宝の鍵は龍の舌の下に有るといったので女王は驚いて彼に献上した。そこで帰依の偈文で病気を治すように頼まれ龍たちの業病をその偈文で救った。それから宝を五色の布に包んで黒小船のところに戻ったが船は無いので呪文を称えると五色の布が虹の道となり部下のところに着いた。500人の部下も子供を仏の化身として帰依した。 そして子供は先にドルマ堂に戻った。しかし門は犬がかじって残りかすとなっていて多くの經典は失われ台所へ行くと母は目を患い目が見えなくなっていて頭髪の毛には鳥の巣が作られていた。母に呼びかけると自分の子供と分からず悪臣神足だと思い「刀で刺し殺してください」と哀れに訴えたのでパドマ・オェバルが海から戻った母の子であると話したが信用しないので「教えた偈文を称えてみせろ」といわれ、三回称えてみせたので母の目も見えるようになって自分の子と分かり互いに喜びあった。 母子が酒宴をしているころにナカムニ国の人々が外道王にパドマ・オェバルが帰っていると告げ口したので悪臣神足が王命で呼びにきたので、王に宝希望集満を持って行き献上した。しかし、王はパドマ・オェバルの能力を恐れて臣たちと相談すると法臣ドクダクが槍や刀では彼を殺せないので南西羅刹国の宮殿ナムカ・ディンチョエに金の鍋琉璃の払子(ガヤブ)を獲りに行かせたら良いと申し上げたので全員一致した。以前の500人の部下も戻ってきたので王がパドマ・オェバルを呼んで鍋ガヤブを獲りに行けと命令したので、母に対する重税を免じ、王が母の病気の世話と死んだら鳥葬の世話をすると約束した。再び前の500人の部下を連れ食料を持って遠征に出かけた。広い大地に着くと危険なので部下を帰国させようとしたが、彼らもお供して一緒に行くと聞かなかったが帰依偈文を三回称えて考えを変えさせ帰国させた。
しかし鍋ガヤブを手に入れることは困難と悩み遂に自殺しようと崖を飛び降り様とした時にドルマ堂から雀が飛んできて止めたので羅刹国へ向かった。鉄の色の盆地に狼のうなり声がみち、遊牧テントが張られ、木炭汁が流れるような川の所に黒い羅刹女が居て子供が宿を借りようと話しかけると捕まえられ、揉んでから飲み込まれたので、帰依偈称えると不味いものが吐き出されるように吐かれたので、羅刹女はびっくりして帰依した。羅刹女に止められたが進んでいった。銅赤色の盆地で血の色の川の所へ行くと羅刹女が久しぶりの人の肉と血だと言って捕らえて三回揉んでから呑み込んだが偈文で吐き出されて帰依した。貝盆地の羅刹女も同様であった。金盆地の羅刹女テハルは金の三脚炉に金の容器にパドマ・オェバルを入れて煮たが呪文でけがもしなかった。
それから彼が帰依偈を誦したときに女王ペタゴンは空行母シャセンにかわった。彼が金の鍋とともに宮殿の屋上から飛ぶと金の盆地に着き、金の盆地の羅刹女を南方宝勝如来の空行母に変えて鉄鉤と縄を持ってこさせた。貝盆地の羅刹女を東方金剛如来の空行母に変えて薬を持って来させ金の鍋の中に入れた。銅盆地の羅刹女を西方阿弥陀如来の空行母に変えて皮袋を持ってこさせ欽鍋のふたにした。鉄盆地の羅刹女を北方不空成就如来の空行母に変えて風を起こす尾を持って来させた。それから子供と空行五人が棒で金鍋を叩くと大地が揺れ、また打つと空性の法音が中空に響き、また叩くとドルマ堂に着いた。母も喜び酒宴をしていたときに国の人々のうわさとなり王に知れたので王が悪臣神足を遣わしてパドマ・オェバルに金の鍋ガヤブと五人の空行母を連れてこさせた。王は金の鍋と五人の空行母を彼から取り上げた。そして臣達を集めて会議で子供を殺すことにきめた。3人の人殺者を呼んでパドマ・オェバルを山頂に連れて行かせ、薪を積んで火あぶりにして燃え尽きた灰を天空に撒き散らさせて跡形も無くならせた。 ナカムニナ国では王がパドマ・オェバルを殺したので目の中の毛が出てとれたようになり、宴会をしているときに、空行母達はパドマ・オェバルが焼き殺された山頂へ喪に服しにいきたいと王に願った。以前の人殺者を呼び案内させてその山頂へ行った。鉄の盆地の羅刹女の空行母が帰依偈文を称えて尾を振るとパドマ・オェバルの灰が集まり、銅の空行母が呪を称え皮袋を打ったので灰が皮袋に入り、金の空行母が帰依偈を称えて鉄鉤と縄を投げると心意識が集まり、貝の空行母が帰依偈を誦して皮袋に薬を入れるとパドマ・オェバルは蘇った。羅刹女の女王の空行母が帰依偈を誦して清まりなさいと壷の水で体を洗った。鉄の空行母をそこに残し、他の空行母たちは宮殿に戻って、金の鍋ガヤブを王から借りてその鍋に入って空中を飛ぶとそれを見た大臣たちも金鍋に入り中空を飛んで楽しんだ。それから王もカルシャパニ商人と悪臣と一緒に金鍋ガヤブに入り中空を飛んでいると空行母たちが棒で三回金鍋を打つと羅刹国へ飛んで行き、もう一度金鍋を打つと羅刹女の宮殿に着き、空から金鍋の口を下に向けると王と臣たちがこぼれ落ちて60人の羅刹の子供たちに食べられた。パドマ・オェバルも王に迎えられ国の人々も仏教を信仰した。 (了) チベットから来日するラマ・マニ師の絵解き公開・奉納を見ることが出来るのは、日本でもあまり例がございませんでした。長野県長野市西方寺の記念事業(2007年9月22日、23日)のために来日したラマ・マニ師についてはこちらをご覧下さい。 |
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